同じ日々の繰り返し

雑誌の後ろのほうに載ってるどうでもいいコラムが大好きなので真似して書いています。あくまで私見です。

マスクを買ったらめちゃくちゃ気持ち悪くなった話

ばいきんまんみたいに、パンチ一発で青空の向こうにキラーン!って飛んでってくれればいいのに。

今世界中を飛び回っている菌はばいきんまんよりはるかに手強く、私たちの生活をじわじわと痛めつけている。
大学はオンライン授業、就職活動は一旦ストップとなり、アルバイトと買い物以外の時間はずーっと自宅にいる。やりたかったことができる!と一度は意気込んだものの、自宅というオアシスで無限に湧き続けるエンタメの泉はとても魅惑的で、映画やアニメ、ゲームなどの娯楽に溺れている。

ずっと自宅にいて感じたことが、消耗品の減りの速さだ。食べ物はもちろん、ティッシュやトイレットペーパーも替えるペースが明らかに上がっている。
ふと確認すると、我が家のトイレットペーパーは残り1ロールになっていた。
3月初旬、オイルショックのようにトイレットペーパーを買い求める映像を毎日見ていたが、今トイレットペーパーは売っているのだろうか。心配になり、買いに行くことにした。

陽が伸びてまだ少し明るい午後6時ごろ、近所のドラッグストアのドアをくぐると、レジでもない場所で15人ほどが列をつくっていた。列の先頭にはネームプレートをさげた店員が列を見張る形で立っている。
どしたんだろー。と思いながら一度は通り過ぎたが、今の時期ドラッグストアでつくられる行列はアレしかない。マスクだ。

引き返して列のほうへ向かっていると、ガラガラとワゴンを押した店員がやってきた。ワゴンには直方体のパッケージが積まれていた。やっぱりマスクだ。
私は数年前に買った50枚入りのマスクが残り数枚になっていたのを思い出し、買わなきゃな、と反射的に列に加わった。やがて列は進んでいき、40枚入りのマスクが店員の手から私に渡された。
「ただいまマスクの販売を開始いたしましたので、お求めの方は入口付近までお越しくださーい!!」
やたらテンションの高いアナウンスが店中に響き渡り、マスクを着けた人々ができたてほやほやのマスクを求めて早足になっていた。

私の心配をよそにトイレットペーパーはパンパンに陳列されていて、奇跡的に手にしたマスクといっしょに会計を済ませ、ドラッグストアを後にした。
ゲリライベントにたまたま遭遇し、超レアアイテムを手に入れたことで若干気分が高揚していたが、自転車をこぎながらあれこれ考えていると段々といたたまれない気持ちになってきた。

 

人々の、そして自身の”エゴ”がむき出しになっていたあの光景が、めちゃくちゃ気持ち悪かった。

連日のニュースやSNSで「予防のためにマスクをしようね、でもマスクはずっと品薄だよ」という情報が人々の脳に張り付いているため、マスクの価値が極限まで上がってしまっているという現状がある。だから人々は外出自粛が叫ばれる中ドラッグストアに向かい、倉庫からマスクがやってくるのを心待ちにして行列をつくる。店員は”すげーもん手に入りましたよお!!”と言わんばかりのアナウンスをして、いい大人たちがその”すげーもん”を手に入れるため心拍数をあげて早足になる。

すべてが「感染予防」というより「マスクの確保」を目指した動きになっているように思う。

冒頭でいったように私はアルバイトと買い物ぐらいでしか家から出ていなくて、マスクを着けているのはその数時間、数分の外出だけである。

だったら買わなくてよくない?と内省した。病院に行く人や電車に乗る人など、感染リスクの高い人に譲るべきだった。私の自宅にはまだ数枚残っているし、様々な自作マスクの作り方もSNSでよく見かける。

 

たまたま遭遇した”レアアイテム”マスクの販売に心を躍らせ、我先にと少し早足になって行列に加わった私のエゴが本当に恥ずかしい。

アンパンマンを助けるバタコさんのように、人のために動くことのできる人になりたいと思った。働く人々に向かって「新しいマスクよ!」ってぶん投げたい気持ちだ。