同じ日々の繰り返し

雑誌の後ろのほうに載ってるどうでもいいコラムが大好きなので真似して書いています。あくまで私見です。

習い事

 色々な習い事を試した少年時代だった。野球少年とよく遊んでいたら少年団に誘われたことがある。とりあえず見学だけでも、ということでヨレヨレのキャップとまったく手に馴染んでいない父親のグローブを持って練習に参加したが、打てない・捕れない・投げられないの三拍子が揃っている私は開始一時間で挫折、以来野球とはめっきり距離を置いている。将棋にハマっていた時期には友人に将棋教室を紹介してもらった。プレハブ小屋にパイプ椅子と長机、そして大量の老人が配置されている超アウェー空間だった。数人の老人と対戦したが、どの老人も幼い私の王将を容赦なく追い詰めていった。そこで当時の私は再び挫折し、タバコ臭いというめちゃくちゃな理由をつけてそれ以降そのプレハブ小屋に足を踏み入れることはなかった。その他にも書道やそろばんなどを習おうと試みたが、結局やらなかった。挫折の連続である。

 そんな中、唯一続いたのが水泳だ。小学1年生の頃から約6年間スイミングスクールに通い続けた。飽き性かつ運動音痴気味の私が、6年もの間水泳を続けていたのは今思えば奇跡だ。親の仕事の関係で小さい頃からプールに行くことが多く、水への恐怖心が人より少なかったことが功を奏したのかもしれない。

 スイミングスクールは週に一回で、レベル別で10人ほどのクラスに分かれてレベルに応じた練習に励んでおり、それぞれのクラスには担当の先生がついていた。色黒ゴリマッチョの先生、通称”こげぱん”が私たちの担当の時期があった。こげぱんはそのスクールで生徒たちからとても人気で、練習の休憩時間も生徒と話をしたりじゃれ合ったりして、面白くてカリスマ的な存在だった。ある日の休憩時間、”生徒を動物に例えると何か”という話をこげぱんがしていた。真っ黒に日焼けした指で生徒を指差しながら、「お前はライオンかなあ」とか「うさぎさんだな」とか一人一人を動物に例えていた。

 そしてこげぱんは私の前にやってきた。ワクワクしながら、何の動物に例えられるか静かに待っていた。

ナマケモノ!」

 こげぱんは人差し指を私に振りかざしながら言った。当時の私は耳を疑い、苦笑した。ナマケモノ?一日の大半を木の上で何もしないで過ごすアレ?しかも他の生徒を例えた時は「うーん」とか少しシンキングタイムがあったのに、私の時だけ即答である。よっぽどナマケモノフェイスだったのかもしれない。もしかすると、色んな事にすぐ挫折する私を単純に「この怠け者!」と罵倒したのかもしれない。